笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
「そう気がつかせてくれたのは、奏くんでした」
声も、身体も、震える。
私の腕を掴んでいた奏の手の力が。
ゆっくりと、抜けていく気がした。
奏の母親は煙草を吸ったまま、私に目を合わせようとはしなくて。
恐怖と本音の狭間で、私は、言葉を続けた。
「奏くんは私と正反対です、だから私は奏くんに惹かれました、それで私たちは出会ってからずっと、同じ時間を過ごしてきました」
自分でも何が言いたいのか分からなくなって、絡まる言葉たちを、ゆっくり整理して、まとめていく。