笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


力が入らなくて、倒れそうになった。


奏の母親は、私の胸ぐらから、そっと手を離して。


奏の方を向くと、話を聞こうとしていた。


足元が若干ふらついたけど、それに耐えて、私も奏のほうを向く。


奏は、やっぱり“笑顔”だった。


さっき聞いた話では、母親は奏に確か“目も合わせようとしない”と言っていたから。


今こうやって2人が見つめ合っていることが、もしかすると少しの進歩なのかもしれない。


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