笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


「俺はこれまでずっと、母さんしか頼りがいなかったんだよ、だから母さんに尽くしてきたつもりだし、逆に邪魔しないようにもしてきたつもりだ」


奏は笑顔のまま、母親に向かって話し始める。


笑顔の言葉は、苦しくて。


少し、震えていた。


奏の気持ちになると、胸が潰されそうに痛くなった。


でも。


でも今は何も言わず黙って、私はただその言葉を一歩後ろに下がって聞いていた。


「頼り?何言ってんのよ?金さえあればいいんでしょ?それで生きていけるものね?」


母親はそう言うと、今度は奏に近寄って。


奏の前まで行くと、奏の腕を掴んだ。


危ない。


「ニコニコでもしてご機嫌とってきたつもり?」


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