笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


奏の腕を掴む、その手の力は。


きっと相当強いのだろう、母親の手は力が入りすぎて震えていた。


怒りが見える。


目に見える怒りが、とても怖かった。


私の腕ならきっと、耐えられないだろう。


でも。


「違ぇよ」


奏はそれだけ言うと、母親の手を振り払って。


逆に、母親のその手首を掴み直した。


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