笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


その力に、奏の母親は睨むようにして威嚇する。


だけど、それでも、奏の表情は変わらなかった。


そして、その唇は優しく言葉を発した。


「俺は母さんに、ただそばにいて欲しかっただけ」


全身に、鳥肌が立つのを感じた。


優しい瞳で。


でも切なくて、苦しくて。


それがきっと――奏の、本音。


その言葉で、自分のことを思い出す。


ああやって本音を言ったときは――胸が震える。


奏の言葉は、少し震えているように感じたから。


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