笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
抱きしめるというよりは、背の高い奏に抱きついているようだったけど。
奏は笑っていた。
これがきっと、この2人の真の姿、親子の姿だった。
何かを言ったことで何かが絶対に変わるという保証なんてなかった。
だけど、何かを言って何かを変えようとしたことが、その姿勢が、きっと2人を動かし、通じ合わせた。
何かを変えようとした2人がいたから、何かが変わったのかもしれない。
私はしばらくの間、ただその2人を見つめていた。
何も言わず、静かに。
でも、温かい瞳で、そっと。
私の大切な人が、幸せになれた瞬間が。
きっと、私も幸せになれた瞬間だったから。