笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
今は、その腕から離れたくなかった。
私は奏を呼ぶと、その腕に、抱きついた。
でも奏に抱きつく力さえも、私には残っていなくて。
弱々しい力でしか、抱きつけなかった。
それでも奏は、そんな私を抱きしめてくれた。
「依美、ありがとな」
奏の体温がゆっくりと伝わってきて、私はいつの間にか安心感を覚えていた。
「ごめんね勝手なこと言って、でも…全部、本音だった」
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