笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
誰もが嫌うこの当番だが、私は別に嫌いではない。
何しろ放課後の教室は、数分前と同じ世界とは思えないほどに静かで、無気力で、大人しいものである。
ここに特別な魅力を感じるわけでもないが、決して居心地の悪いものだと感じているわけでもない。
難しく考えることが嫌いだから、とくに深くは考えることはしないけれど。
でもきっとそれは、私にとって大切な、私のための空間なのかもしれない。
気が付けば空を見上げていた視線に我に返り、私は思わず落としそうになった黒板消しをもう一度掴み直す。