笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


たかが数学の一問の問題、されど一問の問題。


だけど、この瞬間にも、きっと意味はある。


チョークを持って、白い線が書かれた上の部分にそっと数字を書いていく。


さっきまで離れていた場所で聞いていた音が、今は私の耳元で聞こえる。


その、コツコツという音と共に、進む私の指先。


そして――


「おお、沢野正解だ、流石だな」


教師は私の解いた答えに、大きく丸を付けた。


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