笑顔を持たない少女と涙を持たない少年




放課後の教室。


全開にした窓から入ってくる風はすっかり涼しくなっていて、私が来なかった間に季節が変わったことを強く実感させた。


私は背伸びしながら、左から右へ順番に黒板を消していく。


掃除当番は毎日どの生徒かに割り当てっているはずなのに、今日は私以外誰もこの教室に残らなかった。


掃除が終わってもいちいち教師がチェックしに来るわけじゃないから、サボったとしても気が付かれない。


掃除当番を嫌う生徒たちのなかには真面目に掃除をする人なんていなく、真面目にするどころかそもそもの掃除をサボって帰って行く人が多いのだ。


いつもならだらけた生徒たちを見て良い気分にはならないけど、今日は久しぶりに掃除をしようと思った私にとって好都合だった。

< 431 / 463 >

この作品をシェア

pagetop