笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


「奏」


――私が、笑顔になる瞬間。


「久しぶりの授業、どうだった」


奏は笑って、教室の中へと入ってくる。


その表情は前と変わって、余裕が出来たように思える。


それはきっと、苦しさを我慢するということをやめられたから。


無理して笑うということを、やめられたから。


奏は前よりも、もっと素敵な人間になっていた。


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