笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
はじめは、自分の手とドアを疑った。
自分の手には力が入りにくいのではないかとか、ドアに鍵がかかっているのではないかとか。
でもいつも開いていた力で開こうとしたはずなのにこのドアは開かなかったし、そもそもこのドアには鍵穴が無い。
実際にこの部屋の中で紅茶を飲んでいるとき、あまりにも誰も入ってこないものだから、てっきり奏が部屋の鍵をかけているものだと思っていたけど、私がドアを見ても鍵穴はなく、不思議で仕方なかったことを思い出した。
「やっぱりな、これで確信した」
奏は開かなくなったドアの前で、そう言って頷く。
それはまるで何かを悟った名探偵のようで、私は奏を見ながら首をかしげた。
「確信って、何を?」