笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


「私たちが、笑えるように、泣けるようになったから」


その理由以外にあてはまるものは、きっとない。


私はそれだけ言って、ただ奏のことを見つめる。


奏は、もう既に私を見ていた。


目が合って、嬉しそうに、でも少し切なそうに。


2人で、笑いあった。


そうか。


もう私たちは、この部屋には入ることができない。


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