笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


もうあの時間には、戻ることができない。


あの大きな木も、ふさふさした芝生も、あのパステル調の家具も、ティーポットも。


もう、この目で見ることはできない。


「ちょっと、寂しいな」


交じり合っていたその視線を外した奏は、もう一度ドアを見つめる。


「うん」


私も同じようにドアを見つめると、そっと、呟いた。


もし私があの日、担任に雑用を頼まれていなかったら。


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