笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


もしあの日が、私の誕生日では無かったら。


もしあのとき、ああやって風が吹いていなかったら。


私はこの部屋を見つけられていなかっただろうし、奏にも出会えていなかっただろう。


だから、奏と出会えたことは、今私がこうしてここに生きているということは、全ての出来事が折り重なって生まれた、大きな“奇跡”。


少しでも違う出来事が起こっていたら、少しでも違う道へ進んでいたとしたら、今の私は全く違う人生を生きていたかもしれない。


その全てに気が付かせてくれるきっかけになった、この部屋。


「次は誰がこのドアを開けられるんだろうな」


奏の声は、やっぱり少し切なかった。

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