笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
そりゃあ、私よりももっと長い間ここで過ごしていた奏だし、過去に好きだった――彩菜さんと過ごしていた場所でもあるだろうから。
その場所にもう入ることが出来ないなんて、きっとかなり悲しいことだろう。
だけど、きっと次にここを必要とする誰かは、きっと現れる。
それは“不思議体質”の、私たちのような。
そう、次にこのドアを開けられるのは。
「笑顔を持たない少女と――涙を持たない少年かな」
「それ、俺たちじゃねぇか」
私の言葉に、奏は笑った。