笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


そりゃあ、私よりももっと長い間ここで過ごしていた奏だし、過去に好きだった――彩菜さんと過ごしていた場所でもあるだろうから。


その場所にもう入ることが出来ないなんて、きっとかなり悲しいことだろう。


だけど、きっと次にここを必要とする誰かは、きっと現れる。


それは“不思議体質”の、私たちのような。


そう、次にこのドアを開けられるのは。


「笑顔を持たない少女と――涙を持たない少年かな」


「それ、俺たちじゃねぇか」


私の言葉に、奏は笑った。


< 448 / 463 >

この作品をシェア

pagetop