笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
「失礼しました」
職員室はガンガンに冷房が効いていて、この暑さの中で教師たちが一粒の汗も流していない理由が分かった気がした。
私は母親の作ってくれたお弁当を食べ終えてから向かった職員室で、何枚ものプリントを渡され、今、その職員室を出た。
渡されたプリントには何パターンかの種類があって、種類ごとにプリントの向きを縦、横、と互い違いに重ねられている。
それを一枚ずつホッチキスで留めていくという作業を、私は任されたのだ。
普通なら面倒と思う作業かもしれないが、今日の私にとっては好都合で、タイミングの良いものだった。
それに期限は明日までだと伝えられたから、焦ることなくゆっくりその作業に取り掛かることができる。