笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


そこには既に宙を舞った粉とその匂いが、暑さに混じり合って私を覆っていたから、思わずそっとその場から身を離した。


窓のそばから離れ、再び教壇の上へと足を乗せる。


黒板に向かって立ちそのまま何歩か足踏みをしてみると、トントン、と軽い足音が鳴って、私はその音にそっと耳を澄ませた。


自分の足音には、どこかに妙に落ち着く要素がある。


自分の居場所を示しているようで、その存在に安心するのかもしれない。


さっきまで真っ白だった黒板消しの表面は、今では綺麗な緑色の布が顔を見せていて。


綺麗になった2つの黒板消しを、置かれっぱなしの折れたチョークの横にそっと寝かせた。

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