笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
「はぁ…」
私の口からは思わず小さな声が漏れていた。
仕方なくしゃがみこむと、そこに舞ったプリントを追いかけるようにしながら拾い集め始める。
一瞬の風で、遠くまで飛んでいった、そのプリント。
たくさんの人が私の横を通りすがったり、たくさんの人が少しだけ慌てた私をジッと見つめたりした気がしたけど。
顔を上げず、ただプリントを拾っていた。
顔をあげてしまったら、誰かの“世界”に、たくさんの“世界”に、飲み込まれてしまいそうな気がしたから。
「よし…」
一番遠くまで飛んでいったプリントを追いかけ、手に掴み、そっと顔を上げる。