笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


気が付けばそこは、行き止まりで。


知らない間に私は、廊下の一番奥まで来ていたようだ。


普段、廊下の奥までなんて来ることがないから、そこはまるで違う空間のように思えた。


無事全て拾い集めたプリントを軽く整え、今来た道を戻るためその場で回れ右をしようとした時だった。


「…何も書いていない」


廊下の一番奥にあった部屋。


私の目の前に立ちはだかる部屋。


そこに、教室を示すプレートが掲げられていないことに気がついたのだ。


普通の教室なら例えば“3-A”とか、“音楽準備室”とか、そういうプレートが掲げられているのだけど。


この部屋には、それが全く見当たらない。

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