笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
少女漫画の主人公みたいに、最高の笑顔で。
笑うことが出来るのだろうか――?
――なんて、笑えるはずはないのだけど。
それは所詮、漫画の世界の話だってこと。
分かっているけど。
このまま手に少しの力を入れて、横に引けば。
見たこともない景色が、私を待っているのは確かかもしれない。
運命の人なんて、いないことは分かっているけど。
もしかしたら、新しい何かを発見できるかもしれない。
勝手な期待に、勝手に胸を弾ませて。
そっと、その入口の取っ手に手をかける。