笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
――誰、だろう。
やっぱりまだこの状況が理解することができず、何も言えないままの私に、その人はまた笑いかける。
「俺の名前は城咲 奏、奏って呼べよ」
城咲 奏 (シロサキ ソウ)。
その人はそう言って、私の方へと近寄ってくる。
これは――
これは、漫画の世界の話――?
私が今見ているものは全て、空想のものなの――?
「おい?」
その人は気が付けば私の近くに立ち止まっていて、何も言わない私の目の前でそう言って様子を尋ねた。