笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


掃除は、終わった。


私は自分の席に置いたままだったカバンを取ろうと、教壇を降り、その場所まで少しの距離を歩いた。


「みぃっ」


その途中で、私は不意に聞こえた声の方へと振り返る。


何も言わずただ無言で振り返った私に、彼女は笑顔で頷きながら近寄ってきた。


茶色でふわふわのミディアムヘアはポニーテールにされていて、丈を短くした制服のスカートが微かな風に揺れている。


スッキリとまとまった清潔感の中に、可愛らしい彼女の笑顔がとても映えていて。


きっと“魅力的な人間”って、こういう人のことを言うのだと思う。

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