笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
私の背中に、声がぶつかる。
それは紛れもない、少年の声で。
驚いた私が振り返る。
そしてまた、少年と目が合って。
――少年はその手に、私がスマートフォンに付けていたはずのキーホルダーを持って笑っていた。
「え…」
私はポケット越しに、スマートフォンの有無を確認する。
手にはスマートフォンの四角い角が触れて、ポケットの中にはスマートフォンがしっかり入っていることが分かった。
そしてその瞬間、私はいつの間にかキーホルダーだけ落としていたことに気がついた。
いつ落としたのだろう。