笑顔を持たない少女と涙を持たない少年




やはりこの部屋では、チャイムの音は聞こえないようだ。


スマートフォンで時間を確認すると、とっくに授業が始まっている時間で。


だけど。


担任に任された雑用、私はそのプリントたちを、机に預けてしまった。


そして、生まれて初めて――授業をサボっている。


――コポコポ…


静かな音を立てて注がれる紅茶が、その空間の中にゆっくりと溶けていく。


パステル調の家具に、花が咲き誇る大きな木。

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