笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
下は芝生で、でも壁と天井があって、ここは屋内で。
この空間が学校の中にあったドアを開けて出会ったものなのだと、今でもまだ信じることができない。
「ほら、エミ」
私は少年の笑顔に呼び止められて、気が付けばパステル調で可愛らしいその椅子の上に腰を下ろしていた。
彼は私の名前を何の抵抗も不自然さもなしにそう呼ぶと、そっと紅茶のカップを私の目の前へ置く。
カップから上る湯気に含まれるその香りで、それがフルーツティーだとすぐに分かった。
フルーツティは好きだけど、それを喉を通すのをまだ少しためらう私に、少年は優しく笑いかける。
「まぁ、飲まなくてもいいけど」