今宵、君と月の中で。
・気づいた本音
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グズグズとしていた空が雨雲を吹き飛ばした今日、梅雨明けが宣言された。
七月も十二日目になり、すっかり夏らしい青空が広がっている。
先週の水曜日から始まった期末テストも火曜日の今日が最終日で、最後のテスト科目だった日本史と数学にしっかりと手応えを感じたこともあって、いつになく心が開放感に包まれていた。
「ねぇねぇ、ほっちゃん」
「ん?」
「ここの問題、わかった?」
「えー、どれー?」
SHRが始まる前に帰り支度をしていると、隣の席の堀田さんのもとにやって来たクラスメイトの中野(なかの)さんが、数学の問題用紙を広げて指差した。
「うーん……って、わかるわけないじゃん! 私が数学嫌いなの知ってるでしょ!」
「やっぱり、ほっちゃんじゃダメかぁー」
「失礼な奴ー!」
中野さんもバレー部に所属していて、休み時間によく一緒に過ごしているほど仲良しのふたりは、きっと部活でもこんな感じなのだろう。
昨日も今日も堀田さんに挨拶をするだけで精一杯だった私には、ふたりのような関係性には縁がないことはわかっている。
だからこそ、視界の隅にチラチラと映る彼女たちの明るい笑い声を聞きながら、少しだけ羨ましく思ってしまった。