今宵、君と月の中で。
「ごちそうさまでした」


ツキを気にしながら夕食を食べ終えた時には、ツキは私の足元で寝転がっていた。


器にはご飯が四分の一ほど残っていて、思わず小さなため息が漏れる。


「また残したの? もういらないの?」


私の言葉にピクリと反応したツキは、ゆっくりと起こした体を私の足にすり寄せた。


最近、ツキは食欲が落ちた。


普段は特に変わった様子はないから蒸し暑さのせいかと思っていたけど、もしかしたらどこか悪いのかもしれない。


不安を感じながら抱き上げて膝に乗せると、ツキはいつものように喉を鳴らしながら甘え出した。


その愛らしい姿に笑みが零れるけど、ご飯が残ったままの器を見ると胸の中にはすぐに不安が戻って来た。


「近いうちに病院に行こっか」


食事も水もきっちり与えているし、室温だって気に掛けている。


それでも体調を崩すことはあるだろうし、なによりもこの二週間ほど食欲が落ちたままのツキが心配でたまらない。


病気をした時みたいにぐったりしているわけではないから様子を見ていたけど、このまま放っておいて大事に至ったら絶対に後悔するし、なによりもなにかあってからでは遅い。


私にとって、ツキはかけがえのない存在で、大切な家族だから。

< 29 / 233 >

この作品をシェア

pagetop