今宵、君と月の中で。
塾に通っている月曜日と木曜日は、帰宅してから家を出るまでとても慌ただしい。


近所にも塾はあるけど、この辺りだと中学時代の知り合いがいるかもしれないからわざわざ二駅先にある塾まで通っていて、さらにはツキのことが気になって一旦帰宅するからゆっくりできる時間はない。


個別指導の塾は、机がひとつひとつ仕切りで区切られているおかげで生徒たちと関わることはないから余計な心配はいらないし、熱心な先生が多くて教え方はわかりやすい。


月曜日は数学と英語、木曜日は数学と国語の授業を受けている。


塾に通い始めたのは半年前からだけど、それまで苦手意識の強かった数学の成績が安定するようになったし、もともと好きだった英語と国語はさらに好きになった。


高校生になってから苦手意識が強くなった数学を塾で勉強するようになった今では、どちらかと言うと得意科目だと言えるようになっている。


両親には評判のいい地元の予備校に通うことを勧められたけど、現段階の結果だけ見れば今の選択でよかったと思う。


だって、予備校だとどうしても個別指導のように生徒たちとまったく関わらないというわけにはいかないし、なによりも中学校の校区内から程近い場所にある予備校を選ぶ勇気はなかったから……。

< 36 / 233 >

この作品をシェア

pagetop