今宵、君と月の中で。
塾の帰りは決まって遅くなるから、自宅の最寄り駅に着いてからは自然と早足になる。
自宅までの道のりは人通りが多い方で明るい場所ばかりだけど、夜遅くにひとりで歩くのはほんの少しだけ不安になることもある。
スキニーデニムに英字がプリントされたグレーのTシャツというラフな格好をしているうえに、美容室に行くのが億劫で伸ばしているだけのセミディの髪とノーメイクの顔なのだから、別に誰からも興味を持たれたりはしないだろうけど……。
こんなご時世だからなのか、学校では基本的に夜は制服で行動しないように指導されていて、母からも『遅くなる時はくれぐれも気をつけるように』と何度も言われているから、少しは緊張感を持たなければいけないことはわかっている。
とは言え、顔だって十人並みで人目を引くわけでもないのは重々理解しているから、自意識過剰に思えることもあった。
すっかり雨が止んだ夜道を歩きながらそんなことを考えていると、自宅近くの公園が見えて来た。
直径五メートルほどの噴水を兼ねた水場があるこの公園は、三年前にツキと出会った場所。
ここを通るたびに決まってそのことを思い出す私は、レンガで囲うようにして造られた出入り口の前に人が立っていることに気づいた。
自宅までの道のりは人通りが多い方で明るい場所ばかりだけど、夜遅くにひとりで歩くのはほんの少しだけ不安になることもある。
スキニーデニムに英字がプリントされたグレーのTシャツというラフな格好をしているうえに、美容室に行くのが億劫で伸ばしているだけのセミディの髪とノーメイクの顔なのだから、別に誰からも興味を持たれたりはしないだろうけど……。
こんなご時世だからなのか、学校では基本的に夜は制服で行動しないように指導されていて、母からも『遅くなる時はくれぐれも気をつけるように』と何度も言われているから、少しは緊張感を持たなければいけないことはわかっている。
とは言え、顔だって十人並みで人目を引くわけでもないのは重々理解しているから、自意識過剰に思えることもあった。
すっかり雨が止んだ夜道を歩きながらそんなことを考えていると、自宅近くの公園が見えて来た。
直径五メートルほどの噴水を兼ねた水場があるこの公園は、三年前にツキと出会った場所。
ここを通るたびに決まってそのことを思い出す私は、レンガで囲うようにして造られた出入り口の前に人が立っていることに気づいた。