今宵、君と月の中で。
一瞬足を止めてしまいそうになったのは、距離が縮まる最中で公園の前に立っている人が若い男性だと気づいたから。
昼間なら主婦や地元の中高生が集まっていることはあるし、私が中学生だった時も彩加と帰宅する日には何度かそこで足を止めたことがある。
だから、人がいること自体はちっとも不思議ではないけど、こんな時間にひとりで公園の前にいる人を見ることは滅多になかったから、少しだけ身構えそうになったのだ。
それが自意識過剰だと思い直したからこそ足を止めなかった私は、公園がある左側から少しだけ距離を取るためにさらに右側に寄って歩いた。
出入り口のすぐ傍にある街灯の光が、まるでその男性のためだけに存在しているかのように彼を照らしている。
ただの蛍光灯の光なのに、夜の空気のせいなのか、空を見上げているらしい男性の横顔とその姿はどこか儚くも見えた。
無意識のうちに視線を向けていたことに気づき、彼のいる場所まで残り二メートルほどになった時に慌てて目を逸らしたけど……。
「あっ!」
視線を逸らし切る前に男性が私を見たことを感じた瞬間、どこか焦りを孕みながらも柔らかな雰囲気を纏った声が飛んで来た。
「待って!」
そして、続けてそんな言葉が耳に届いた。
昼間なら主婦や地元の中高生が集まっていることはあるし、私が中学生だった時も彩加と帰宅する日には何度かそこで足を止めたことがある。
だから、人がいること自体はちっとも不思議ではないけど、こんな時間にひとりで公園の前にいる人を見ることは滅多になかったから、少しだけ身構えそうになったのだ。
それが自意識過剰だと思い直したからこそ足を止めなかった私は、公園がある左側から少しだけ距離を取るためにさらに右側に寄って歩いた。
出入り口のすぐ傍にある街灯の光が、まるでその男性のためだけに存在しているかのように彼を照らしている。
ただの蛍光灯の光なのに、夜の空気のせいなのか、空を見上げているらしい男性の横顔とその姿はどこか儚くも見えた。
無意識のうちに視線を向けていたことに気づき、彼のいる場所まで残り二メートルほどになった時に慌てて目を逸らしたけど……。
「あっ!」
視線を逸らし切る前に男性が私を見たことを感じた瞬間、どこか焦りを孕みながらも柔らかな雰囲気を纏った声が飛んで来た。
「待って!」
そして、続けてそんな言葉が耳に届いた。