今宵、君と月の中で。
校舎の端にある非常階段は、屋根はあるけど吹き抜けになっていて、雨の日は風向きによってはコンクリート造りの階段も柵も濡れている。


小雨とは言え、今日みたいな日にはほとんど人が来ないことをわかっている私は、自動販売機でパックのお茶を調達してからそこに向かった。


非常階段は予想通り人気がなくて、風向きのせいで階段のコンクリートの外側部分が十センチほど濡れていたけど、校舎側の壁に寄って座ればなんの問題もなさそうだ。


二階と三階の間の踊り場からさらに二段分上がってから腰を下ろすと、制服のスカート越しにひんやりとした感触が肌に届いた。


買ったばかりのパックにストローを挿し、まずは冷たい緑茶で喉を潤す。


それからメロンパンをひと口かじり、ぼんやりとしながら咀嚼した。


そんなことを繰り返してメロンパンを食べ終え、ラップに包まれたおにぎりに手を伸ばす。


三角に握られたおにぎりの真ん中に唐揚げがひとつ押しつけるように添えられ、上には申し訳程度に黒ごまが乗っているこれが、校内名物のからむす。


八十円という良心的な価格のからむすは、『この学校にいる誰もが一度は口にしたことがあるはずだ』と言われるほど、先生たちからも生徒たちからも人気を集めている物だ。

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