今宵、君と月の中で。
五限目の世界史と六限目の生物は、何度か睡魔に襲われながら授業を受けた。


午後の授業ならではの満腹感を抱いている時間に眠くなるのは、たぶん仕方がないことだと思う。


教室内を見渡せば、机に突っ伏したり頭が揺れている生徒が何人かいて、先生が注意をしてもその人数はあまり減らなかった。


私も六限目の途中で睡魔に負けてしまいそうだったけど、ジメジメとした梅雨の気候が感じさせる鬱陶しさのせいで快適な睡眠からは程遠くなることはわかっていたから、無駄に丁寧にノートを取って耐えた。


少しだけ開いた窓から入って来る雨の匂いは湿っぽくて、まだしばらくの間はこんな日々が続くのだと思うと憂鬱になる。


ただでさえ学校が楽しくないのに、雨の日は登下校さえも面倒になるし、ジメジメとした気候に集中力を削がれる。


こんな日には、私にとっては居心地の悪い教室の空気が全身に纏わりつくようで、昼休みの不満が残っていたことも相俟ってイライラしてしまう。


高校の入学式の挨拶の時、髪の薄い校長先生が『私は十七歳の頃が人生で一番キラキラしていた』なんて言っていたけど、“十七歳”なんてちっとも楽しくない。


だから、学校にいる時の私は、いつだってどこか不機嫌なんだと思う──。

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