ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
「傷ついちゃったねぇ」
綾さんのコメントには適当に頷いてみる。薄情っていうのは言葉が悪いかもだけど、ほんとのことだし傷ついたりしないよね。
「あのね、結衣ちゃん。シゲは薄情なんじゃなくて、自信がなかっただけだと思うなぁ」
自信? なんの話か綾さんってほんとによくわからない。
でも気になって少し説明してもらおうとした時、入口の方で聞きなれた声がした。
「すいません、重野結衣子ってここにいますか」
慌てて立ち上がって「どうしたの?」と小走りに入口に向かったら、「なんで電源切ってんだよ!」といきなり怒鳴られてビクッと立ち止まった。
姉に向かってこんな風に怒鳴ったりする弟じゃないのに。
「おじさんが見つかって病院から電話来て、親父がもう行った。俺だけじゃ止められないから来て」
守に早口で状況を説明される。うそ!おじさんが事故でも起こして運び込まれたの? でもそれより、お父さんが乗り込んで兄弟けんかが始まったら最悪だ。
「どこの病院?」
「近いよ、総合病院。俺バイクで来たからすぐ行けば間に合うかも」