ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
『よかったな……あのさ』
シゲの声が、電話の時だけのあの優しい声に切り替わる。やめて欲しいのに、つい聞きいる。
『無理すんなよ。お前いつも冗談みたいに言ってたけど、大変なんだろ』
目の前にいたら、睨んでごまかせるのに。見えないからできなくて、困る。
あの頃も、笑い話にしながら話すことで、いつもなんとなくあった不安を忘れることができていた。大人の話は私たちには隠されていたけれど、親たちのピリピリした空気やこそこそと何か話しあっている雰囲気にびくついていたから。
「ありがと」
泣かないように息を吸って、気合いを入れて声を出す。
「でもね、話すと結構笑えるっていうか、聞いてもらうだけで楽になったんだよ。だから大丈夫」
『そんなのでよければ、またいつでも聞く』
「シゲも話していいよ、大変なこととかあったら」
『俺? 俺は平気』
また笑うような声が聞こえてから、急に真面目に話し出す。
『あの時は今よりガキでなにが起きてるのかわかんなくて、できることもなかった。お前に吐き出して中途半端に巻き込んで、悪かったと思ってるよ。何も言うべきじゃなかったと思ってる』
そんなことないのに。逆なのに。
『俺のせいでいじめとかあったんだよな。ごめん。今日、田辺とかあの辺に会って来てだいたい聞いた』