ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
「うちの話なんだけど。うち離婚とかなんだかんだあって、俺は今じいちゃんの養子になってるんだよ。親父は失踪届ってのが出てて、時間が経てば死んだことになる」
家庭の事情か。確かに少し聞いたことがある。
「探してるようなふりをしてるけど、親父が戻ってくるとまずいことが色々あるらしくて。本当に誰も居場所を知らないのか、俺に隠されてるのかもよくわからない。ホームレスかもしれないし、死んでるのかもしれない」
ああ、こないだ結衣のおじさんが見つかったって話があったから、その流れで自分の話する気になったのかな。
「そんなにしてまで守ってるのがこのボロい工場ぐらいのものなんだよ。まあ他は全部なくなったし、じいちゃんがここを大事に思ってるのはわかるんだけど」
なんだかんだ言いながら、おじいちゃんが好きなんだよな、シゲって。
「住むとこもいつも勝手に決められるし、会社も作らないといけないとか周りが勝手にやり始めたから、俺がやるってタンカ切っちゃって。
先輩のつてとか色々頼って平井さんに紹介してもらって。あの人ちょうど会社作ろうかって言ってるところで、場所あるなら楽しそうだって乗ってきてくれた」
ゆっくり考えるように話すシゲを、俺も結衣も黙って見ていた。