ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
「会社作るのは別に簡単だし、場所もあるし、金も今は別になんとかなる。だから、試してみたいと思ってる」


そうか。家の話じゃない、シゲ自身の話をしてるんだ、やけに真剣に。


「何がやりたいのかも手探りだし全然まだわかんないけど、形は。でもあの絵作った時、俺にはすごい手応えあった。平井さんがいつも言ってることがわかった気がした。
どうなるかはわかんないけど、少なくとも潰れたからって逃げなきゃいけないような形にはしない。綾さんとも話して金のことも考えてるし、親父と同じ道はとらない」


言い切って、一度息を吐いた。


「だから、いなくなったりしないから」


最後は、結衣をまっすぐ見て言った。





「話はそれだけ」


結衣がまだシゲを見てる。前に聞いた、シゲが苦手にしてるという強い目で。


「だもんで、夏が終わってもなんか手伝って。二人とも忙しいと思うけど」


照れたように言ったシゲをまだ眺めてちょっと間をおいてから、結衣が嬉しそうな笑顔になってシゲをからかった。


「だもんで、だって。春ちゃんみたい」

「うるせえな、尚人がいるから静岡弁うつるんだよ」

「ねえ、あれ尚人くんのギター?」


いきなり明るく話題を変える。目に涙を溜めてるって、悪いけど俺たち気づいてるよ。しょうがないから、付き合ってあげるけど。

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