ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
まあいいか、と動画のチェックを始めた。我ながらよく撮れてる。歌に気をとられてたけど、画面で見ると甘ったるいな。時々目を合わせて笑いあったりしてる。
「なに、撮ってたの、見せて?」
結衣が覗き込んで来た。
「ねえ、これ春ちゃんに送ってもいい?」
「言うと思ったけど、ダメ。俺のほうがうまいって知ったらショック受けるだろ」
俺が答える前に、シゲから笑いながらもダメ出しだ。
「高校からギター始めたって言えば大丈夫だよ」
結衣の言葉にシゲが目を細める。イラついた時の顔だ。
「結衣、こんなことで春ちゃんにまで嘘つく必要ない」
結衣が息を呑んだように、固まって黙った。
なんだ? 嘘?
「ホワイト・ライって奴だよ、それ。誰も傷つけないための白い嘘って奴」
フォローを入れてみた。嘘っていうか方便っていうか。罪のない嘘にいちいち怒る必要ないのにな。潔癖だからね、シゲは少し。
「嘘は嘘だろ、白いとか関係ない。言ってるうちに自分だってわかんなくなるんだよ、だんだん。何が本当で何が嘘か。うちの家族なんかそんなのばっかりで、白くても汚いよ」
「白くて汚いか。詩人だね」
茶化そうとしてもダメだった。
「黒板消しとか、真っ白だけど汚ねえだろ。白い嘘ならいいとか、俺は思わない」
俺と話しててもずっと結衣を見て言ってた。結衣は、大きな目をぎこちなく逸らした。