ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?

そのまま言葉を続けられなかった。


『ほかに誰が知ってる? ガンだったっていうの』

「誰にも言ってない」

『古瀬には?』

「言ってない」

『……じゃあなんで、俺に言おうと思った?』


なんで? 聞かないでよ、そんなの。


「シゲなら春ちゃんと仲良いから、かな」


嘘じゃないけど、ほんとでもない。シゲに聞いて欲しかっただけ。話聞くって言ってくれた。でも、今軽いため息が聞こえた。困ってる?


『ほんとのこと知りたい? 俺から聞いてみるか』

「わかんない。知りたくないかも。ごめん、やっぱりいい。春ちゃん聞かれたくなさそうだし」

『よくないんだろ……結衣は待ってればいいから』


またそういう風に優しい声出さないでよ。


『結衣?』

「ごめん、やっぱりいい。話したかっただけ。聞いてくれてありがと」


スマホの通話を切ってから、この切り方はおかしいんじゃないかと我に返る。明らかに話の途中だ。


ただ心配だよねって一緒に抱えて欲しかったのに、シゲは『俺が聞いてみる』ってすぐにでも電話しそうな勢いだった。


自分が知りたいからって、春ちゃんが聞かれたくないことまで聞いていいの?




かけ直して来るかと思ったけど、来なかった。わけわかんないと思われてる、きっと。


電気を消して眠ろうとしながら、寝返りを繰り返す。アイスを食べながら私に向けた笑顔と、あの子に飛びつかれた時の嬉しそうな顔が何度も浮かんだ。




抱きつかれてた、百年ぶりでも。会ってなくても色々話してるみたいだった。


同じ場所で再会して怒ってにらんでた私とは大違いで、どっちが親しいかなんて明らかなのか。


せめて最初からいてくれれば、こんな気持ちにならなくて済んだかもしれないのに、今帰って来るなんて最悪だ。
< 127 / 207 >

この作品をシェア

pagetop