ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
そのまま言葉を続けられなかった。
『ほかに誰が知ってる? ガンだったっていうの』
「誰にも言ってない」
『古瀬には?』
「言ってない」
『……じゃあなんで、俺に言おうと思った?』
なんで? 聞かないでよ、そんなの。
「シゲなら春ちゃんと仲良いから、かな」
嘘じゃないけど、ほんとでもない。シゲに聞いて欲しかっただけ。話聞くって言ってくれた。でも、今軽いため息が聞こえた。困ってる?
『ほんとのこと知りたい? 俺から聞いてみるか』
「わかんない。知りたくないかも。ごめん、やっぱりいい。春ちゃん聞かれたくなさそうだし」
『よくないんだろ……結衣は待ってればいいから』
またそういう風に優しい声出さないでよ。
『結衣?』
「ごめん、やっぱりいい。話したかっただけ。聞いてくれてありがと」
スマホの通話を切ってから、この切り方はおかしいんじゃないかと我に返る。明らかに話の途中だ。
ただ心配だよねって一緒に抱えて欲しかったのに、シゲは『俺が聞いてみる』ってすぐにでも電話しそうな勢いだった。
自分が知りたいからって、春ちゃんが聞かれたくないことまで聞いていいの?
かけ直して来るかと思ったけど、来なかった。わけわかんないと思われてる、きっと。
電気を消して眠ろうとしながら、寝返りを繰り返す。アイスを食べながら私に向けた笑顔と、あの子に飛びつかれた時の嬉しそうな顔が何度も浮かんだ。
抱きつかれてた、百年ぶりでも。会ってなくても色々話してるみたいだった。
同じ場所で再会して怒ってにらんでた私とは大違いで、どっちが親しいかなんて明らかなのか。
せめて最初からいてくれれば、こんな気持ちにならなくて済んだかもしれないのに、今帰って来るなんて最悪だ。