ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
「静岡に行って来たの?」
「行こうと思ったんだけど、結局電話で話しただけ。最初から言えばいいんだよ。心配だから聞いてきてって。結衣のためなら行くよ」
「だって春ちゃんが知られたくなさそうだから」
文句言ってる場合じゃないのに、こんなことしか言えない。
「一回目の時に抗がん剤の途中で行ったんだろ。結衣にひどいところ見せたって春ちゃん気にしてた。もうちょっと元気になってから会いに行こうぜ」
そうだった。苦しそうにしている春ちゃんは、見てるだけでも結構きつくて、また相談しないで行って変なタイミングになっちゃうのは怖かった。
「治るの?」
「かなりの確率で治るって言ってたよ」
何も言えなくて、両手で口元を覆った。安心したなんて言葉じゃ足りないと思った。ぐらぐらしてた地面が急に固まったみたいで、反対に落ち着かないような。
再発だけど、治る。本当に?
安心させるための嘘じゃないよね、とシゲの顔を見たら、「嘘なわけないだろ」とまた心を読まれた。
「それだけ。電話は出ろよ。俺無視されるの嫌いなんだよ」
こんなことはなんでもないって感じでそっけなく言う。シゲはいつもそうだ。大事なこともいつも、どうでも良さそうに言うんだ。
「じゃ」
守のほうを向いて声を掛けると、公園の入口に止めてあった自転車にまたがり、手を挙げて行ってしまった。