ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
「かっこいいなぁ、東城先輩」


隣で守がうっとりした様子でつぶやく。


「こないだは怒ってたくせに、いきなりなに」

「あの後俺呼び出されてさ、他の先輩経由で。姉ちゃんはさ、これだけしてもらってるくせにまだ純くんに未練あるの?」

「は?」

「東城先輩はそう思ってるんじゃないの。姉ちゃんは純くんの話ばっかりしてるってさ」

「未練なんかないし、純の話なんて別にしてないよ」

「俺だったら先輩選ぶけど」


純とシゲのどちらかを私が選ぶとか、そういう周りが思うような話じゃ全然ないんだから、しかたないでしょそんなの。


「帰ろう。ありがとね、守」

「俺じゃなくて東城先輩に言いなよ。ついでに抱きついたりしてみたら」


調子に乗りはじめた守の背中を、ばんっと音を立てて叩いた。


私じゃない人に、もう抱きつかれて嬉しそうにしてたんだよ。二人で夜遅くまで一緒にいたんだよ。静岡に行こうと思っていかなかったのも、あの人が帰ってきてるからかもしれないじゃん。





二人でゆっくり歩いて帰る。守は進路の話はする気がないらしい。


「春ちゃん先生、ガンだったんだ?」

「うん。去年勝手にお見舞い行ったでしょ。それでわかっちゃって。言わないでって言われてたの」

「東城先輩わざと俺巻き込んだんだと思うよ、姉ちゃんが秘密主義だから心配して。
姉ちゃんさぁ、相当大事に思われてるよ。もともと惚れてたんだし、意地張ることないんじゃないの」
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