ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
一通り回ってから不忍池に向かう。動物園の中からも見られるけど、たくさん水鳥がいる場所を目指して門を出て池の周りをぐるりと進んだ。
二人で池の柵によりかかって探すけどユリカモメはいない。双眼鏡を持ってきたと見せたら、「本気だな」とまた上から褒められた。
近くでバードウォッチングをしているおじさんにシゲが声を掛けて聞いたら、ユリカモメは夏には大陸へ渡ってしまっていなくなるんだって。
「夏に来た時はいなかったんだっけ」
「覚えてないな。初めて結衣と来た時いたよな」
「描こうとしてたら逃げられたりしたね」
まあいいか、としばらく他の鳥を見ていくことにした。睡蓮が有名なこの池。そういうモチーフも使えるかなぁと考えてみるけど、やっぱりぴんと来ない。
それからシゲにしばらく貸していた双眼鏡を「返して」と取ろうとしたら、ニヤッとして上に持ち上げられた。
「ふざけないでよ!」とジャンプしたら肩がぶつかりそうによろけた。とっさにかばってシゲに斜めに倒れこみ、受け止められた形になる。慌てて離れて謝った。
「ごめん、ちょっとフラッとして」
「悪い……ケガ、まだ治ってないんだな」
「うん。だいぶいいけどね」
さりげなく言ったつもりだったけど、やっぱりあざをかばったのがばれた。少しずつ治りつつあるんだけど。そういえば、この話してなかった。あれから聞かれなかったけど、どうせわかってるんだよね。