ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
周りに誰もいないことを確認するように素早く目をやって、シゲは目を細めて聞く。
「じゃあ逆? あいつに言うこと聞かされてる?」
意味がわからなくて、一瞬止まって考えた。いや、純に言うこと聞かされたことなんてない。私が言ったんだ、付き合ってることにしようって。
「違う。そんなことない」
「今、なんか考えたよな」
「でも、違うから」
「脅されてる? 殴られてるんじゃないなら、動画撮られたとか」
動画って? 一瞬理解できなくて、あ、いやらしい動画ってことかとわかって抗議する。
「そんなのあるわけない!」
そんな風に考えてたの? 私が純に殴られてたり、変な撮影されてたりとか? 心配してくれてたのはわかるけど、恥ずかしすぎる。シゲにそんな風に見られてたなんて。
「純とは別れてるし、ケンカしてからは会ってもないし、なんでもない。本当に。殴られても何されてもない」
どう言ったら信じてくれるかわからないけど、とにかく真剣に言いきった。
シゲがふうっとため息をつく。
「そっか。じゃあ、まぁ普通の話か」
普通の話ってなに。どういうのなら普通なの。まだ顔に血が上っていて、まともにシゲを見られない。
「お前がなんか困ってんのかなって思ってただけ。助けてやれるかなって。ま、俺の妄想だよな」
真剣だったシゲの口調が、急にリラックスした。そんなひどい話じゃないってわかってくれたのか。よかった。
「そう、別に何にもないから」
もう一度言い添えた。