ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?

好きって言っても、信じてももらえなかった。嘘と隠し事ばかりで、これも嘘だと思われたんだ。


純を好きなんだって確かめるためだけの意地悪なキスをしたくせに、私が泣きやまないから困ってる。




知らないんだから、シゲは。これが私の初めてのキスだなんて。


でももう言えない。言ったらきっとシゲが気にするし、純とのことを全部話すことになる。そんなことしてもなんの意味もないって、もうわかったのに。




頑張ってなんとか泣き止んだ。そのまま動物園を出て公園内を通って駅まで帰ることにする。生い茂った森の中で、九月なのにまだ少し蝉の声がする。秋の虫も鳴き始めてる。シゲはもう何も聞いてこなかった。


階段でちょっとよろけた時にさっきと同じ腕を掴まれて反射的に身体がびくっとしたら、シゲも驚いたようでそれからは少しすきまを開けて歩いていた。


私が乗り換える駅で「じゃあね」とだけ言って先に降りたら、一緒に降りてきて「ごめん、結衣。悪かった」とまた謝る。


もういいよとか、気にしないでとか言ってあげたかったけど、うまく声が出せなくて下を向いたまま首だけ振った。




自業自得ってこういうこと。


何年もずっと嘘をついていた。私の嘘のせいで傷ついた女の子がいたとしても、おかまいなしだった。純を諦めるためにはその方がいいぐらいのことを思っていた。


自分勝手だった報い。


告白も嘘だと思われて、気持ちのないキスをされる。そのことに傷ついたりする資格も本当はない。


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