ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?

翌日、どうにか気を取り直してまた自転車で会社に向かう。


もう九月の半ばで、バイトはもうすぐ終わりだし、綾さんや尚人くん、仲良くなった人たちに会える時間も残り少ない。行かなくちゃ。


シゲだって会社ではきっと普通だ。私が純を好きだと思い込んでるだけ。


もう、それでいい。




「昨日急に休んですみませんでした」


言った途端に綾さんに心配そうな顔をされたけど、少し溜まっていたデータ入力を隅のパソコンでやって午前中を過ごした。


風邪を移したら困るからと言い訳して、ランチの用意は手伝わなかった。真央ちゃんには今はできれば会いたくない。




午後は尚人くんに捕まって、まだやっていなかった作業場の壁を塗ることになった。


「黒板欲しいってシゲが前に言ってたからさ、置き土産に塗ってってやろうと思って。俺の自腹だよ。バカ高かった」


塗るだけで壁を黒板にできる塗料を使って、腰から上を一面大きく塗っていく。木枠を貼り付けて本物らしくするんだって。


「教室っぽくなるね、急に」

「チョークはあるけど黒板消し忘れたから、後で買ってこないと」


尚人くんが思い出したように言う。黒板消しか。白くても汚いと言われた嘘のかたまり。


「黒板消し二つあれば、ぱんぱん叩いてきれいになるよ」


と言うのはきっと彼の優しさなんだろう。私と純とで、叩き合ったらきれいになるかなぁ。尚人くんに向けて笑顔を作ろうと思ったけど、うまくいかなかった。

< 158 / 207 >

この作品をシェア

pagetop