ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
翌日、どうにか気を取り直してまた自転車で会社に向かう。
もう九月の半ばで、バイトはもうすぐ終わりだし、綾さんや尚人くん、仲良くなった人たちに会える時間も残り少ない。行かなくちゃ。
シゲだって会社ではきっと普通だ。私が純を好きだと思い込んでるだけ。
もう、それでいい。
「昨日急に休んですみませんでした」
言った途端に綾さんに心配そうな顔をされたけど、少し溜まっていたデータ入力を隅のパソコンでやって午前中を過ごした。
風邪を移したら困るからと言い訳して、ランチの用意は手伝わなかった。真央ちゃんには今はできれば会いたくない。
午後は尚人くんに捕まって、まだやっていなかった作業場の壁を塗ることになった。
「黒板欲しいってシゲが前に言ってたからさ、置き土産に塗ってってやろうと思って。俺の自腹だよ。バカ高かった」
塗るだけで壁を黒板にできる塗料を使って、腰から上を一面大きく塗っていく。木枠を貼り付けて本物らしくするんだって。
「教室っぽくなるね、急に」
「チョークはあるけど黒板消し忘れたから、後で買ってこないと」
尚人くんが思い出したように言う。黒板消しか。白くても汚いと言われた嘘のかたまり。
「黒板消し二つあれば、ぱんぱん叩いてきれいになるよ」
と言うのはきっと彼の優しさなんだろう。私と純とで、叩き合ったらきれいになるかなぁ。尚人くんに向けて笑顔を作ろうと思ったけど、うまくいかなかった。