ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
少し黙って二人で作業する。ふと、尚人くんがつぶやいた。


「あいつもそういう禅問答みたいなことしか言わなくて、意味がわかんなくて手助けのしようもなくて、イライラする」


手助けなんて必要ないんじゃないかな、こういうことって。周りがいろいろ絡んで来れば来るほどややこしくなる。


「俺、来週帰る。それまでに仲直りしてよ」

「もう帰るの?」

「そんな顔するとさらって帰るよ、結衣」


にやっと言われて、ふっと笑えた。


「笑うところ? 俺の精一杯の告白だってわかってる?」


まだ言ってるから「うん、ありがとう」とまた笑った。大丈夫、ちゃんと笑える。


「終わっちゃうね、夏休み」

「すぐ冬休みも春休みも来るよ」

「またこっちに来られる?」

「来るよ。東京楽しいし、ここ面白い人集まってくるし。シゲも俺がいないと寂しいだろうから」


そうか。私はどうするんだろう。夏休みが終わったら。




告白して振られて気まずくなっても、バイト期間が終わるからいいかって自分で思ったことなのに。こんなことになってもまだ会いたいなんて、どうかしてる。


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