ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?

助けを求めるように純が怯えた目で私を見たとき、思わず声が出た。


「違うの、全部嘘なの! 最初からなんにもない、付き合ってない! 好きな人ってシゲのことなの」


ダメだ、言い過ぎた!


純も目を見開いて私を見た。驚いてるけど、まっすぐに。


シゲの手が今勢いをなくしてる。もう後には引けない。


「……何言ってんだよ」

「純も、シゲを好きなの。これは嘘じゃないから」


意表を突かれた感じのシゲに、できるだけはっきりと目に力を入れて告げる。


私を見ていたシゲが一瞬純に目をやって、その瞬間に理解した、と思った。




その途端、身体が勝手に動くみたいにして、私はその場を逃げ出していた。


鍵をさしたままの自転車に飛び乗って、元来た道へ漕ぎ出す。


「結衣!待てよ、おい!」


シゲの声が聞こえたけど全力で無視する。怖くて、見られない。シゲがどんな反応するのか。


ごめん、純、許して。


勝手に言って、ごめん。逃げて、ごめん。






がむしゃらにこぐのに、ペダルが重い。


立ち上がって思い切り踏み込み直したのと、突然右から車が飛び出してきたのが同時だった。


踏み込みながらブレーキをかけたせいかキーッとおかしな音がして、ゆっくり自分が地面に倒れていくのが分かった。
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