ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?

「家出したんだよ、うちが最悪だったとき。春ちゃんの部屋に転がり込んだ。そんとき見ちゃったんだよね、そういう雑誌を」


シゲが少し恥ずかしそうに説明する。


「意味がいまいちわかんなかったんだけど、よく考えたらそういう性癖だなと思って。俺には知られたくないだろうなと思ったから、春ちゃんにも一度も言ってない。それどころじゃなかったしさ、俺の人生。半分忘れてたよ、さっきまで」


優しい声でまた聞いてくる。


「なんでお前が知ってんの?」

「ずっと春ちゃんを見てたから、春ちゃんが見てる人もわかった」


体育の先生。ゲイかどうかは知らない。でも、美術室からいつも校庭を見てたし、視線の先がその人だって私は知ってた。


ずっとなんとなくわかってたけど、中三の春、純の秘密を知った時に確信した。うまく言えないけど、二人はどこかが似ている。


「だからこいつをかばったんだ? バカだな」


私も純もボロボロなのに、シゲは一人ですっかり満足した調子で微笑む。


なんだよ、知ってるなら先に言ってよ。シゲには知られちゃいけないと思ってたのに。お兄ちゃんみたいに懐いてた春ちゃんがゲイだと知ったら、ショックなんじゃないかって。

< 172 / 207 >

この作品をシェア

pagetop