ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
結衣。僕は君が思ってくれてるようないい人間じゃない。 君は全然知らないと思うけど、君の存在を初めて意識した時には、君のことを憎みさげずんでいたんだ。




中学三年で初めて同じクラスになれた東城くんと、部活が一緒で仲が良い女子。


くだらない女子の会話に楽しげに加わって、男子の視線はさらりと軽く受け流すような、表面だけきれいにつくろった子。


近寄りがたいはずの彼に美術室に誘われるのを当然に受け止め、女子の羨望と嫉妬の眼差しも意に介さない。


あんな平凡にかわいいだけの自惚れた女子をなぜ彼が気に入っているのか、本当に謎だと僕は思っていた。





あの日、あの瞬間。


僕の人生は終わったと思ったんだ。東城くんの体操着を抱きしめている姿を、よりによって君に見られた。


叫び出したかった、あの時。羞恥心と恐怖で。


それを見た君はなぜかショックを受けたように固まり、必死な様子で僕をなだめた。誰が誰を好きでも興味はない。君は確かにそう言った。




今やっとわかる。なぜあんなにも君が僕を守ろうとしてくれたのか。


君が好きだった人が、僕と同じように男の人を好きだったから。僕を守ることは彼を守ることにつながっていたんだ、君の中で。


何も知らない僕は、君を信じるまで長く時間がかかったし、恩を売って身を守ろうとさえ思っていた。女子たちからいじめられ一人でいた君の役に立つことで。きっとあれも余計なお世話だったんだろうね。

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