ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?
あっという間に乗り換え駅が近づいて、もう電車が減速し始めていた。
シゲが立ち上がって「またな、尚人」とあっさり言ってドアに向かう。寂しいくせにさっぱりしてる。かっこつけてる。
私もバッグを確認して立ち上がって、振り向いて尚人くんにお別れを言おうとしたところで、少しふらついた。
尚人くんが腕をつかまえてくれたと思ったら、そのままぐいっと腕の中に引き寄せられて「またね、結衣」と囁かれた。
この人はほんとに、女の子慣れしてるよなぁ。
押し戻して離れて「またね」と私も手を振って、ちょうど開き始めたドアから降りた。驚いたせいで別れの寂しさも何もなくてよかったかも。その辺まで確信犯だったりしないよね。
走り出した電車を見送っていたら「行くぞ」と右手を取られた。
「ふらふらするなよ。治ったんじゃないのか」
シゲは不機嫌そうに言ってそのまま歩き出す。階段を降りても手をつないだまま、乗り換えのホームに向かう。
足なんて治ってるよ。電車が止まるとき揺れただけだよ。でも言ったら離されそうだから、何も言わずについていった。
大丈夫、私は別に嘘はついてない。